イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「それって、もうトライアルの域を超えてるよね」
マティーニのグラスへ上品に唇をつけつつ、飛鳥のニヤニヤ笑いは止まらない。
「うっ……そんなこと……」
返す言葉が見つからなかったわたしは、ひとまずしおしおと目の前の料理――ビーフシチューを口に運んだ。
初デートから3週間。
秋深まる11月に入っても、坂田くんとの“トライアル恋愛”は、意外なことに順調だった。
違いすぎると思ってた2人なのに。
思っていた以上に、彼とわたしの感覚は近かったし、一緒にいることが心地いい。
今まで知らなかった彼を知れば知るほど、
目が離せないっていうか、もっと知りたくなるっていうか……
……ん?
いやいや違う違う!
「ないない、大丈夫。トライアルはトライアルよ。キスもしてないし」
煩悩を追い払うみたいに、口調を強くした。