イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

「それって、もうトライアルの域を超えてるよね」

マティーニのグラスへ上品に唇をつけつつ、飛鳥のニヤニヤ笑いは止まらない。

「うっ……そんなこと……」

返す言葉が見つからなかったわたしは、ひとまずしおしおと目の前の料理――ビーフシチューを口に運んだ。


初デートから3週間。
秋深まる11月に入っても、坂田くんとの“トライアル恋愛”は、意外なことに順調だった。

違いすぎると思ってた2人なのに。
思っていた以上に、彼とわたしの感覚は近かったし、一緒にいることが心地いい。

今まで知らなかった彼を知れば知るほど、
目が離せないっていうか、もっと知りたくなるっていうか……


……ん?

いやいや違う違う!

「ないない、大丈夫。トライアルはトライアルよ。キスもしてないし」

煩悩を追い払うみたいに、口調を強くした。

< 148 / 539 >

この作品をシェア

pagetop