イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

「はぁ、A4の紙数枚を綴じたもので、資料かと言われれば、そのようにも見えました。マル秘って書いてあって。普通そういうものはシュレッダーでみなさん処分されますし、この方にいいんですか、って聞いたんですけど、すごくお忙しそうで、……」

「いやだ、あたしのせいにしようっていうの?」
「いえ、そういうわけでは……」

資料が勝手にゴミ箱に飛び込むわけはないし。
西谷さんが他の文書と一緒にゴミ箱に入れちゃったか……まさか窓の開かない高層階で、風で舞うなんてないだろうし。

「あれは、明日クライアントに返却する、大事なものなの。探してもらわないと困るんですけど」

そもそも管理が甘かったのはそっちのくせに、どうしてこう上から目線なのかなこの子は。
うんざり気味のわたしを、腕を組んだままの西谷さんが睨みつけてくる。

「清掃会社との折衝は、中村さんの担当だとか? だからあなたを呼んでもらったんですけど」

「ええ、そうです」

「見つからなかった場合、業者の変更を検討するように言うんで。あなたの責任についても一緒に」

このレーザービームみたいな眼差しには見覚えがある。
もしかして、坂田くん絡みの嫌がらせじゃないでしょうね、って疑問も湧いたけど……

そこでついに多恵さんが泣き出してしまい、それ以上深く考える余裕はなくなってしまった。

まずいことに、今日は課長が出張で不在。
明日必要だというからには、今日中になんとかしなきゃってことよね。

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