イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

あぁやっぱり失敗した。
この位置からじゃ、テーブル席は真後ろ。
様子なんか全然わからない。

かといって、振り返ってマジマジ見てたら、絶対気づかれるし……。

何度か誰かを待ってるふりをしながら携帯を動かし、チラチラ目をやるんだけど……恥ずかしいほどに無理がある感じ。

つくづく自分に探偵業はむいてない、とあきれ果てた。


それでもなんとか確認したところでは、連れはいないみたい。
隅のテーブル席にいて、静かに一人で飲んでる。
待ち合わせ……でもないのかな、全然ドアとか時計とか、気にするそぶりがないもの。

そんなことを考えつつ、肩越しに伺っていたら。


ふいに、彼が視線を動かし――バチっと思いっきり、目が合ってしまったぁ!


ひぃっ!


発作でも起こしたみたいに、一瞬にして心臓がバクンと飛び跳ね、華奢なスツールから転げ落ちそうになって、カウンターにしがみつく。

バクバクバク……

死んだふり、じゃないけれど。
とにかく彼の目に留まらないようにと、ひたすら石像と化すわたし。

どうか見つかりませんように(いや無理だろう)――!

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