イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!


カチャ


もはや聞き慣れた音が小さく響く。
ハッと目を開けたときにはもう、彼の姿は店内から消えていた。


ウソでしょーーーっ!



「お釣りはいりません!」

言い捨ててお札を置き、コートとカバンを引っ掴むと、転がる様にドアから飛び出した。

ええと、彼は……

やった、ツイてる! 
なんとか間に合った、男は階段を上りきるところだ。
神様ありがとう!

足音を立てないように気を付けながら、頭を低くして(何も隠れてはいないけど)、階段を駆け上がる。

そして、ゆったりした足取りで歩いていく後姿を視界の先に捕らえ、ホッとして。
後に続いた。

自分で話をつけよう、なんて大それたこと考えてるわけじゃない。

ただ、例えば彼が何者かわかるだけでも、トラブルのあれやこれやが解決に近づくような気がしたから。

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