イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

駅前の喧騒を通り過ぎ、しばらく車を走らせ。
大通りから一本中へと入ったのどかな住宅街の一角で、坂田くんはエンジンを切った。

車窓から覗くと、サイコロのような可愛い四角形の建物がある。
1階の大きな窓ガラス越しに、鏡とイスが見えて……あぁ、美容院だってわかった。
アンティークっぽいロートアイアン家具が白木目に映えて、とっても素敵なサロン。

「しのぶさんって、美容師さんなの?」

車を降りながら聞くと、「あぁ」と彼が頷いた。
なるほど。どうりでヘアスタイルもファッションも、おしゃれだったわけだ。

「裏が実家なんだ。入口はこっち」

導かれるままに店舗横、レンガの小道を進むと、はたして言葉通りレトロ調のドアが現れた。

や、やっぱりちょっと、いやかなり、ドキドキするな。
彼氏の実家、だもんね。
普段通りでいいって言われて、そのまま手持ちのワンピースで来ちゃったけど、もう少し考えた方がよかったかも?

なんたって、美容師だし。
いろいろダメ出しされたりして?
うわ、どうしよう……。

手土産の紙袋、その持ち手をぎゅっと握り締め。
緊張したまま、カギを開けて中に入る彼の後ろへ続いた。

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