イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「は?」
聞くなりガバッと、彼が半身を起こす。
「ちょ、ちょっと待て、美弥子! お前はオレ以外の男の夢を見るのかっ!?」
本気で焦りだすから、笑っちゃった。
「顔怖いよ、慎ちゃん」
「当たり前だろっ。一体誰だよ!」
「お父さん」
ふふって微笑みながら言うと、「へ?」って虚を突かれたみたいに彼がぽかんとしてる。
「お父さんとお母さんと、潮干狩りに行った時の夢」
あれは……夢じゃない。
確かな記憶だ。
「すごくすごく小さな頃ね、ほんとに連れてってもらったことがあってね」
わたしたち家族にも、あんな思い出、あったんだよね。
何もないわけじゃなかった。
「すっかり忘れてたなぁ」
つぶやくわたしをホッとしたように見下ろした慎ちゃんは、再び体をベッドへ戻し、腕枕してくれた。
「よっぽど楽しかったんだろ。めちゃくちゃ幸せそうな顔で笑ってた」
「うん、楽しかったよ……すごく」
あの頃はまだ、家の中に笑いがあった。
お父さんもお母さんも、お互いにいろんなことを話してた。
そんな時もあったのに。
いつからか、少しずつ、何かが変わってしまった。