イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

怨念を込める勢いで「お願い」を繰り返す相手は、もちろん飛鳥だ。

「西谷さんのことさえ話せば、坂田くんもわたしにその気がなかったって、納得してくれるはずなの。でも、他部署の人間にアシスタントのこと悪く言われるなんて、嫌じゃないかなって。信じてくれないかもしれないでしょ?」

飛鳥からなんとか上手く説明してもらえない? 今度焼肉でもなんでも奢るから! と続けると。
『そんなことになってたなんてね』って、ブルーな気分を吹き飛ばすような明るい声音が答えてくれて。

あぁよかった、絶対引き受けてくれると思ってた。
と、肩から力が抜けた――んだけど。

『ねえ、デートしてみる気はないの?』

ギョッとして、「ちょっ……飛鳥、ちゃんと聞いてた?」って、手にしたモヤシのパックをムギュって握り締めちゃった。ごめんね、モヤシ。

「『抱きたい』、だよ? ちょっと遊んで、ポイって捨てられるに決まってるでしょ」

再び、抱きたい、の部分だけ小声で言い、モヤシをささっとカゴに放り込んだ。

『そうかなぁ。あまりプライベートをオープンにしない奴だし、はっきりとは言えないけど……そもそも坂田ってさ、ほんとに女ったらしなのかな?』

想定外の爆弾投下に、「は!?」って変な声がでちゃった。

「だって飛鳥も言ってたじゃない。“他のヤツならともかく、坂田くんが女子にどうこうされるのは考えづらい”って」

『んー、そりゃ女子の相手は上手いよ? 飲み会なんかだと、特にね。でもそれって、単にあいつが人たらし、ってだけのことだと思うの』

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