イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!

『加えて、あいつって、1年目からクライアント接待入れるくらい結構野心家で上昇志向強いから、女の子たちを敵に回さない方がいいって、打算があるのかも。でも、どう? 特定の相手となると、全然聞いたことないでしょ? 社内社外、問わずにね』

「それは、まぁ……」
確かに、その通りだ。
クライアントの担当嬢から貢がれそうになったとか、モテ伝説は多々耳にするけど。
例えば、誰々と付き合ってるとか、デートしてるのを見たとか、そういう決定的な話は……聞いたことない。

『自分から一人の女の子を欲しがるなんて、これまでのあいつの行動とは合致しない。かなりレアだってことは間違いないの。だからね――逆じゃないか、って気がする』

「逆?」

意味がよく飲み込めず、カートを売り場の端に寄せ、会話に集中する。
「どういうこと?」

『冗談ぽく見せかけて……実は本気だったりして? 一目惚れとか』

「ひ、ひとめっ!? ……ちちち、違うよ、ありえないっ!」

ブンブン手を振ってしまってから、急いで周りを確認。

こんなことなら、店に入るんじゃなかった。
少し悔やみながら、改めて、ありえないよ、と声を強くした。

「絶対遊びだってば。飛鳥だって覚えてるでしょ? 本人が自分で言ってたんだからね? 『本気の恋愛はしない』って」

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