イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
「相変わらずワーカホリックなんだから。矢倉さんに愛想つかされても知らないよ?」
以前紹介してもらった彼氏さんの名前を出すと、朗らかな笑い声が弾けた。
『その時はその時ね。じゃあもう行く。また飲みに行こ』
「うん、またね」
通話の切れた携帯電話を見下ろして、ふぅとため息をつく。
その時はその時ね、か。
そんな風に言い切っちゃう強さが、羨ましい。
まぁ、彼女のことだし、たとえ別れたとしても、今カレ以上のスパダリに見初められちゃうんだろうけど。
飛鳥と初めて話したのは……新入社員研修の時だっけ。
同じチームになって、いろいろ助けてもらったからお礼にって、手料理を振るまったらめちゃくちゃ感激されて。
あれがきっかけで、一緒に飲みに行く仲になったのよね。
でも配属先はもちろん、性格も全然違うし。
あの頃は、こんなに仲良くなるなんて思わなかったな。
まぁ、違うからこそ、ってことは、あるかもしれない。
似てたりしたら、絶対悲劇だよ。
女性としても人間としても、適う気なんてしないもん。
彼女に任せておけば、坂田くんのことも大丈夫だよね。
きっとうまく伝えてくれるはず。
気を取り直したわたしは、今夜のメニューを真剣に考え始めた。