イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
まくしたてながら、シートベルトをがちゃつかせる。
焦ってるせいか、なかなかうまく指が動かない。
カチャカチャ、金属的な音が響く中。
坂田くんは体をシートに深く沈みこませ、視線を天井に上げたまま。
何かを考えてるみたい。
いやいや、彼のことなんてどうでもいい。
とにかく早く、逃げ出そう――
……外れた!
あぁよかった!
解放感にホッと息を吐いてから、運転席へと視線を移した。
「坂田くんとわたしなんて、合うわけないよ――その、恋人としては。考え方とか、全部が全部、違いすぎるんだもん。坂田くんにお似合いの人は、いくらでも他にいると思う」
街灯の明かりだけじゃよくわからないけど、その表情に笑みはない。たぶん、気を悪くしたんだろう。
だとしても、関係ない。
これ以上長居は無用だ。
大通りに出れば、たぶん新宿駅にはたどり着けるだろう。
「……じゃあ、わたし、電車で――」
「それなら」
唐突に。
坂田くんが視線を上に固定したまま、口を開いた。
「試してみようぜ、オレたちが合うかどうか。トライアルってことで」