宇佐美くんの口封じ









「ねぇ雅、」

「ん?」

「あんた、バンドの後輩くんと付き合ってるってマジ?」

「……は?」





翌日。

「おはよう」よりも先にリコにそう言われ、私は思わず顔を歪めてしまった。



「なんか噂になってるんだけど。“みんなの宇佐美くん”のお気に入りの先輩が青戸(あおと)くんと付き合ってるらしいって」




随分と長い接頭語がついているな、と思った。

青戸というのは玲の名字だ。“みんなの”とまではいかないけれど、綺麗な顔をしているので女子人気は確かに得ているはず。


厄介な噂をされてしまった気がしてならない。

“2学年の有名人をたぶらかしているクソ女”とでも言われているのだろうか。


…いや、私みたいな平凡女がたぶらかせるような2人ではないことは重々承知しているので、あくまで例えばの話だけど。




「付き合ってないよ…もちろん宇佐美くんともあれっきり何もない、」

「誰よ、あんな噂流した奴。見つけたらあたしがぼこぼこにしてやるわ」

「…ありがと、」

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