宇佐美くんの口封じ




リコがため息をつく。そして彼女をこんなにうんざりさせている原因である彼​───倉野くんは、そんなことは知る由もない。




「リコさん、休憩いつからですか?俺と回りません?」

「嫌よ!てかあたし彼氏いるし!」

「えーでも好きなものは好きだし。でも俺2番目とかやなんですよね。だから早く彼氏と別れてください」

「バカなの?ねぇ、あんたって凄いバカなの?」

「そうです!俺は前向きなバカなんですよ!リコさん今日も好きっす!」




リコに他校の彼氏がいることを知ってもここまで純粋をアピールを続けられる倉野くんを、私は密かに尊敬している。



リコがどこまで本気で嫌がっていてどこまで実は許せているのかは分からないけれど、何だかんだこの光景を見るのも慣れてきて、微笑ましいとすら思うようになった。




「リコさんの彼氏って文化祭には来ないんですか?」

「…っ、関係ないでしょ!」

「さては何かありました?俺が癒してさしあげましょうか」

「うるさいってば!倉野の分際で偉そうにすんな!」


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