宇佐美くんの口封じ






倉野くんに半ば強制的に腕を引かれるリコに心の中で小さく謝って、「頑張って…」と手を振る。



残された私は、一人で宣伝するのも恥ずかしかったので看板を降ろして適当に校内をぶらつくことにした。



相変わらず校内はどこもかしこも賑わっている。


カップルの姿もよく見えるし、まだカップルではないけどきっと明日の後夜祭でそうなるんだろうな…というような男女の姿もある。




私は人混みを避けようと、立ち入り禁止のロープをくぐって人気のいない階段を歩いた。

こっちの方が近道だし、うっかり宇佐美くんと会うこともきっとない。





この文化祭が終わったら高校生でのイベント事は全て終わりかぁ、と歩きながらそんなことを考える。



軽音楽部は、3年生は文化祭がラストステージになる。



玲の喝がなかったら私は立て直すことができなかったかもしれない。

臆病な私には告白してスッキリするなんてことは出来なかったけれど、玲にそう言われて、こんな事情でみんなに迷惑をかけてメンバーのラストステージを傷つけるわけにもいかないと思えたのだ。

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