宇佐美くんの口封じ





…それはそうと、本当に行く宛てが無くなってしまった。



リコがいたから暇を潰せたものの、1人になっては校内を歩くにしても暇だ。

音楽室に行って一人で練習するでもいいかと思ったが、みんな仕事をしているのに私だけ一人でやるのは良くないかなと思ったり。
最後のリハーサルにかけるしかない。


暇が潰せる場所を色々考えながら階段の踊り場に差し掛かった時。



ふと、"あの場所"を思い出してしまった。





……屋上に行ったら、会えるだろうか。






…いやいや。

宇佐美くんもきっとクラスの模擬店があるだろうし、そもそも文化祭当日は屋上の鍵は閉められて居るはずだ。



…ダメだ。考えるのはもうやめよう。

考えて苦しくなるくらいならもう何も考えない方がいい。




そう思って階段を下ろうと足を踏み出した​──その時だった。



< 147 / 234 >

この作品をシェア

pagetop