宇佐美くんの口封じ





照明が落ちた状態のまま、私たちはステージに出て配置についた。



全員が準備が出来たところで、遥馬の合図で曲が始まる。
同時に照明が付き、視界は一気にキラキラと輝き出した。



客席を見渡すと、宣言通り、私がさっき宇佐美くんを見ていた場所と同じど真ん中に彼はいた。



ラストライブを宇佐美くんに見てもらえているなんて幸せだ。
絶対に失敗はできない。




披露する曲は3曲。

1曲目、2曲目と順調に、大きなミスもなく終える。



3曲目は、私が1番練習していた苦手な曲だ。


本当はきっと両想いなのに、お互いすれ違って上手くいかないまま結ばれないっていう切ない歌詞のラブソング。

そんな歌詞を暗くなりすぎないように歌うアップテンポなリズムが印象的なのだ。




1人で弾き語りをしていたら玲に見つかった時に歌っていた曲だった。

あの後宇佐美くんに突き放されて、家で沢山泣いた過去ももれなく付いてくる。





宇佐美くんと私が両想いだなんて期待していたわけじゃないけれど、変に重なってしまう歌詞があって、練習するのが苦しかった。





この曲で最後。

これが上手くいけば、きっと笑って終われる。


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