それからの日々
今日は洋史の仕事が休日だ。
彼はポートアイランドにある化学メーカーの研究所に勤務している。
ダイニングテーブルの上に、彼がお揃いのマグカップを置く。ポーアイの職場の近くにあるイケアへ行って、二人で選んで買ったものだ。
ダイニングチェアに腰を下ろしたみどりは、両手でそのカップを手にした。
象牙色の地に散りばめられた藍色の花が気に入って求めたのだが、いかんせん体格の良い人が多い北欧発祥のものだけあって、大きくてずしりと重い。みどりは両手のひらで包み込むようにして持ち上げ、中のコーヒーを口に含んだ。
洋史が淹れるのはいつもカフェオレだ。
砂糖をいっさい入れていないにもかかわらず、なぜか甘い。
ほろ苦いコーヒーの味とまろやかなミルクが相まって、豊潤な香りとともにみどりの口腔にほわりと広がっていく。
みどりは思わず、ほおっと息を吐いた。
「あのな、みどり。
……この前、おれの会社に電話があってな」