それからの日々
『……智史くん、食べ盛りやねんから、晩ごはんをコンビニのおにぎりやパンなんかで済ませたらあかんねんよ?』
食べ終わったあと、みどりがやさしく諭すと、彼は目を伏せた。
『なぁ……おかあさん』
娘が母親を見上げて言った。
『さとくんに、うちで晩ごはん食べてもらったらええんとちゃうんかなぁ?』
『あかん、ややちゃんっ。そんなん、できへんっ』
彼があわてて制する。
『さとくん、遠慮せんでええよ?
……うちかって、おとうさんが仕事が忙しくて帰りが遅いから、晩ごはんはいっつもおかあさんと二人っきりで食べとうねん』
みどりは、それを聞いて虚ろに微笑んだ。
娘には「仕事」だと言っているが、実際には違った。彼女の父親は「恋人」の家に入り浸っていて「忙しい」のだ。
折に触れて何度もかかる無言電話が、そのことを告げていた。結婚して以来、相手は変われど断続的に続いてきたことだ。