終わり良ければ全て良し、けど過程も大事
帰り道は無言だった。
お互いの部屋の扉の前に着くと鍵を開けながら俺が先に言葉を発した。
「先シャワー浴びてくるから。俺の部屋で待ってて」
「部屋入っていいんですか?」
「え、なんで?」
「お仕事の道具とかあったら、なんていうか、守秘義務とか大丈夫かなって」
なんでそんなとこ気にするんだ。
声優が好きだからそういうとこに目が向くのかな。
「台本は仕事部屋にまとめてるから大丈夫。っていうか、別に見られても結は拡散とかしない子でしょ。別に気にしないよ」
結が部屋に入るのを見届けず先に部屋に入った。
下着と部屋着のズボンだけ持って浴室に向かう。
冷えた体に温かいシャワーが体に染みる。
こんなに早くこうなるなんて、しかも結から行動してくれるなんて思ってなくて柄にもなく緊張しているのが分かる。
初めてだし、優しくしてあげたい。
でも結のいろんな顔が見たい。
その葛藤でさえこんなにも高揚する。
今までで最速でシャワーを終わらせた。
髪を乾かすのも煩わしくて髪を拭きながらリビングに向かった俺は目を疑った。
「…何してんの?」
結はソファーに座ってさっき買ってきた飲み物を飲んでいたけど、その手に持っていたのは携帯ゲーム機だった。
「早いですね」
驚いた顔で俺を見るとすぐにゲームに視線を戻す。
なんかこれ夕方にも同じようなことなかったか?
そう感じ察した。
「好きな声優が出てるゲーム?」
髪を拭きながら結の隣に腰を下ろす。
「好き…そうですね、好きだと思います。すみません、シャワー浴びるって言ってたので時間かかると思って。セーブするので少し待ってもらっていいですか」
結の手元を覗き込み画面を見るけど何してるのか全然分からない。
俺もゲームはするけどRPGとかアクションゲームだから、たぶんそれとは全然違うジャンルだ。
「おもしろい?どんなゲーム?」
今から男に抱かれるって時に暇つぶしにするほどなんだからよっぽど好きなんだろう。
「いろんなタイプのパパに育成されるゲームです」
「パパ?」
「はい。まじめなサラリーマンのパパ、体育会系の土木関係の仕事をしてるパパ、チャラいホストのパパとか6タイプいて、主人公が赤ちゃんから始まるんですけどパパに合わせた選択とか成長をしていかないと行きたい学校とか仕事に就けないんです」
「へー…なんか珍しい設定だね」
再び画面を覗き込むと何かイベントが始まっているようでなかなかセーブできそうになかった。