心を ほどいて  ~コーディネーター麻里絵

打合せを スムーズに進めるために

私は 次回の内容を 打合せの最後に 説明する。

決めておいてほしいことも 含めて。


でも 湯沢さんは 宿題を やってきたことがない。

前回 決めたことを 覆したりして。

打合せが 前に 進まない。


先生なら わかるでしょう?

授業を進めるために 予習させるでしょう?


走り回る 子供達。

優柔不断で 決断できない ご主人。


こういう人ほど クレームを言ってくる。


私は 諦めて 好きなように 決めさせるつもりだったけど。


「麻里絵ちゃん。そろそろ 外壁と屋根だけは 決めてほしいんだ。」

湯沢さんの 担当営業は 田辺さん。

「着工は いつですか?」

私が聞くと 田辺さんは 苦笑する。

「今月末までには 着工したいんだけど。厳しいかな?」

「ご希望に 添えるように 頑張ります。ああいう人って 自分が 決められなかったことは 棚に上げて 引渡しが遅れると クレーム言ったりするから。」


私の言葉に 店長と田辺さんは 声を揃えて笑う。


「麻里絵ちゃんも 随分 わかってきたな。」

そう言われて クスッと笑う私。


仕事は まあまあ 順調だった。



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