心を ほどいて  ~コーディネーター麻里絵

案の定 大騒ぎの 湯沢一家が帰って。

雑巾を手に モデルルームを歩く 薫ちゃん。

田辺さんの 要望だけは どうにかクリアしたけど。

まだ続きそうな 打合せに ため息をつく私。


打合せに使った サンプルを片付けて。

事務所に戻って 打合せ記録をコピーする。

田辺さんの 机の上に 置いて。


ようやく 私の仕事が 終わったのは

もう モデルルームを 閉める時間。


バッグから スマホを取り出すと

ラインのアイコンに 数字が付いていた。


『打合せ お疲れ様。お詫びに 夕食でも どう?』

田辺さんからのラインに 私は 笑ってしまう。

当の本人は 今 薫ちゃんと一緒に 

モデルルームを 片付けている。


「なんだー。麻里絵ちゃん。イイ人からの連絡か?」

目敏い店長は 私の表情を拾う。

「まさか。私 男性恐怖症なんで。」

笑いながら言うから 誰も 本気にしないけど。


「もったいないね。一番 良い年頃に。俺が 独身なら 口説いているのに。」

「そうなんですよ。そういう人には 評価が高いんですけど。タラレバって 寂しいですよね。
じゃ お疲れ様。」


私は たくさんの荷物を持って 事務所を出る。



 
< 33 / 112 >

この作品をシェア

pagetop