心を ほどいて  ~コーディネーター麻里絵

「少し ドライブしようか?」

車に乗ると 田辺さんは 笑顔を向ける。

頷く私は どうしようもなく 揺れる心で。

もう 田辺さんを 好きになっていたけど。


やっぱり 怖くて 飛び込みたい気持ちを 止める自分がいる。


「麻里絵ちゃん。俺といるの 怖い?」

「うん。田辺さんが いなくなったらって思うと怖い。」

私の言葉に 田辺さんは 優しい笑顔で 私を見た。


「それって もう俺を 好きってことでしょ?」

「そんなこと 言わないで…」

「俺は ずっと前から 麻里絵ちゃんが 好きだって 言っているのに?」


静かに 車を走らせる 田辺さん。

黙って 思いを巡らせる私。


田辺さんといると 黙っていても 気詰まりじゃなくて。


田辺さんは 河川敷に降りて 車を停めた。


「麻里絵ちゃん。俺と 付き合ってみない?麻里絵ちゃんが 俺を 信じられるかどうか。付き合ってみないと わからないでしょう?」

「違うの。私 もう 田辺さんのこと 信じてると思う。だから 怖いの。いつか 失うのが。これ以上 田辺さんを 好きになって また失ったらって思うと 本当に怖いの。」

「俺だって 怖いよ?付き合って 麻里絵ちゃんが 俺の事 こんな人じゃないと思ったって 離れていくかも しれないじゃない?」

「そんなこと…」

「絶対 ないとは 言えないでしょ?だから もっと理解し合いたいんだ。麻里絵ちゃんのことも もっと知りたいし。俺のことも もっと知ってほしい。」

「私 ずっと恋愛してないし。どうしていいか わからないの。」

「いいよ。わかっているから。4年も 見てたんだよ?ゆっくりでいいよ。無理しないで 麻里絵ちゃんのペースで。」




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