心を ほどいて  ~コーディネーター麻里絵

認めてしまった 自分の気持ちが

どうしようもなく 不安で。

でも 田辺さんに 惹かれる気持ちは

止めることが 出来なくて。


黙って 田辺さんを 見つめる私。

「麻里絵ちゃんは どうしたい?」

優しく聞かれて 溢れ出す涙。

「泣きたい…」


小さく答える私を 田辺さんは そっと抱き締めた。

「泣いていいよ。ここで。」


私は 田辺さんの胸で 何度も しゃくり上げた。


甘い切なさ。幸せと恐怖。


フワッと 私を抱いたまま 田辺さんは 背中を撫でる。


誰かの胸で 泣くなんて。

もう 二度とないと 思っていたのに。


田辺さんの胸は 温かくて 大きくて。

こんなに 居心地がいいなんて。


だから 全部が怖い。

「どこにも 行かないで。ずっと。ここにいて。」

うわ言みたいに 泣きながら 呟く私。


「行かないよ。どこにも。離さないよ。ずっと。」

さっき 田辺さんが 言ったように

言葉なんて 何の約束にも ならないけど。


私は 田辺さんの言葉で 前に 踏み出した。





< 50 / 112 >

この作品をシェア

pagetop