心を ほどいて  ~コーディネーター麻里絵

私のアパートから 2時間ちょっと走って。

純也が 車を停めたのは 箱根の美術館。


「こういうのも 仕事の参考に なるだろ?」

木立に囲まれた 高原は 随分涼しくて。

車を降りると 純也は 私に 手を出した。


もう大人だけど。少し 照れながら

私は 純也の手を 握る。


得意気に頷く 純也。


ガラスを ふんだんに使った 建物まで。

手を繋いで ゆっくり歩いて。


展示室に入ると 純也は 私の手を 離した。

「ゆっくり見ていいよ。まりえのペースで。」

「うん。ありがとう。」


大きな美術館には たくさんの芸術作品が 展示してあって。


並んで 歩きながら 私達は

顔を 見合わせては 微笑む。


「素敵ね。」 「綺麗だな。」

小さな声で 感想を言い合って。




私は 一枚の絵の前で 足が 止まってしまった。




< 60 / 112 >

この作品をシェア

pagetop