サヨナラなんて言わない。
それともどうせ治らないという諦めなのだろうか?

それか、余命宣告されてからしばらく時間がたったから?

私の中でははっきりとした答えが出なかった。

それでも構わない。私は私のやるべきことがある。

今日、2人の恋を実らせるんだ。

「よし、蓮花終わったよ。」

母から着付けが終了したことを知らされ、鏡を見るとそこには浴衣姿の私がうつしだされていた。

黒の布に紫の花が咲いていた。

去年まではピンクの浴衣だったが今年は大人っぽくいこうとこの浴衣を買った。

「うん、蓮花よく似合ってるよ」

「ありがと、でもちょっと大人っぽすぎたかなぁ…」

「いいじゃない、よく似合ってるわよ。花火大会、楽しんでくるのよ。」

そう鏡越しに私を見つめる母はどこか悲しげな表情だった。
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