サヨナラなんて言わない。
あんな所を見られてたなんて…

「あれ見て思ったんだ、この人はすごく優しいけど我慢してんだなぁって。私と同じだった。」

「さっちゃんと?」

「うん。私も友達の悲しい顔とか見たくなくてね遠ざけたの。だけど、それって結局凄い後悔残ると思うんだよね。」

「後悔?」

「だって、ずっと仲良くしてきたのに相手にとっては突然いなくなった、裏切られたって思われるんだよ?それってさ、相手の幸せを願ってることじゃないと思うんだ。」

その言葉が心をぐさりと突き刺した。

「蓮花ちゃん、悲しい顔は見たくないし、させたくないのは分かる。でも、それも共有するから友達って言うんじゃないかな?」

「さっちゃん…」

「失ってからじゃ遅いんだよ。分かるでしょ?私たちに確実な明日はないって…」

私の手をぎゅっと握りしめ、寂しそうな顔でさっちゃんは言った。

確実な明日はない。確かにそうだ。

余命宣告された。

私の命は明日、終わりが来てもおかしくない。

「ま、じっくり考えなよ!私はどんな結果を決めても一緒にいるよ。」

「ありがとう、さっちゃん。」

私が礼を言うと照れくさそうにさっちゃんは笑った。
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