桜の色は、藍色の花…
あたしが、吉原に来て、初めての正月が来た。
起きた、あたしは、髪をとかし、着崩れた、寝間着を直し、顔を洗いに廊下に出た。
「(うー…、寒い…。)」
部屋には、火鉢があり、暖が取れるけど、廊下にはなく、寒かった。
あたしは、廊下にある、水場で、顔を洗い下に下りた。
下りた、あたしは、食堂に行くと、いつもより大きな食卓に驚いた。
「(え…、いつもより…、大きい…。)」
食堂には飯番の人が居たが、その他の人は、まだ、誰も居なかった。
飯番の一人に、話しかけられた。
「かがりさん、起きるの早いですね。」
「はい。
今日から、一番早く起きて、食卓を拭いて、神棚にお祈りしようと思って…。
あの、ふきんある?
食卓を拭きたくて…。」
「ふきんなら、これを使って下さい。」
「ありがとう。」
あたしは、大きな食卓を拭いた。
拭いた後、ふきんを飯番に渡した。
あたしは、神棚にお祈りした。
「(昨年は、神様のおかげで、繁盛したそうです。)
(本年もよろしくお願いします。)」
あたしの、お祈りが終わると、ゆきのが来た。
ゆきのは、あたしに気付いた。
「あら、かがり。
早や起きね。
もしかして、食卓…、拭いちゃった…?」
「おはようございます。
はい。
拭いちゃいました。」
「あら…。
わたしはね、正月の一日と二日しか、下で食べないから、この二日間は、毎年、食卓を拭こうと思ってね…。」
「そうだったんですか…。
すいません。
拭いちゃいました…。」
「気にしなくていいんだよ。
明日は、どっちが先かな?
競走ね?」
「はいっ!!」
あたしは、満面の笑みで応えた。
「かがり。
神棚に祈りを捧げたの?」
「はい。」
「なんて祈ったの?」
「「見世が繁盛しますように…。」と…。」
「見世の事を祈ったの?」
「はい…。」
ゆきのは「ふふふ…。」と笑った。
「姉さん、どうしたんですか?」
「いや…、あまりにも、わたしと同じ事をするものだから…。」
「えっ…?!
じゃあ、姉さんも、見世の事を…?」
「そうよ。」
あたし達は、「ふふふ…。」と笑い合った。
そうこういていると、他の姉さん達も、禿達も、下りてきた。
見世の全員が、集まろうとしている時、禿達は、おせちと、雑煮の準備をした。
お節と、雑煮は、位によって、違っていた。
あたしには、雑煮の中に、椎茸、ほうれん草、餅が二個入っていた。
だけど、ほかの禿は、餅一つに、ほうれん草だけだった。
姉さん達も、位によって、内容が変わった。
勿論、一番良いのは、ゆきののお節と雑煮だった。
お椀にも、重箱にも、伊勢海老があって、かなり、豪勢なお節だった。
みんな、ゆきののお節に驚いていた。
あたしのお節は、車海老と、筍と、蓮根(れんこん)と、金時人参よ、椎茸(しいたけ)と、鰤があった。
他の禿のを見たら、車海老と、筍と、金時人参がなかった。
楼主が来て、全員が、席に着いた。
楼主は、みんなの方を見た。
「みんな集まったな?
では、明けましてぇ、おめでとぉございまぁす!!
本年も、よろしくぅお願いぃしまぁすっっ!!」
楼主の挨拶の後、みんな、声を合わせて、「おめでとうございます。」と「よろしくお願いします。」を言った。
新年の挨拶が終わると、みんあで、お節と雑煮を食べた。
食べ終わると、楼主が、禿、引っ込み禿、新造、格子太夫、太夫の順番に、着物をもらった。
この着物も、位によって、質、模様の豪華さが、違った。
あたし達は、楼主にもらった、着物に着替えた。
「わぁー…。
かがりちゃんの着物、きれーいっ!!」
「本当?
ありがとう、もみじちゃん。
もみじちゃんのも綺麗だよー。」
「ありがとう。」
あたし達は、「ふふふ…。」と笑い合った。
着替え終わると、その後は、自由時間だった。
あたしは、若い衆の所に行き、声をかけた。
「あの…。
かがりだけど…。」
「これは、かがりさん。
どうしたんですか?」
出て来たのは、池田だった。
「神社に行きたくて…。」
池田は、微笑んだ。
「分かりました。
では、私と神社に行きましょう。」
「ありがとう。」
あたしは、池田と神社に向かった。
神社に行く、途中で、たのすけに会った。
「たのすけ。
明けまして、おめでとう。」
「明けまして、おめでとうごぜぇます。
かがりさん、どちらへ、行かれるんですかい?」
「神社よ。」
「今、神社すっげぇ、混んでますぜ?」
「えっ!!
やっぱり、多いんだ…。
でも、お参りしたいから行くっ!!」
そこに、たのすけの同僚が来た。
「たのすけ。
こんなとこで、何してるんだ?」
「あっ、やすすけ。
紹介するぜ。
この子が、近江屋の引っ込み禿のかがりさんと、近江屋の若い衆。
かがりさん、こいつは、あっしと同じ会所の者のやすすけと言いやす。」
やすすけは、二十五歳くらいで、二重だった。
あたしは、やすすけに挨拶した。
やすすけは、あたしの挨拶に驚いていた。
「すっげぇ!
これが、引っ込み禿かぁ…。
本当にすげぇな。」
「ありがとうございます。」
あたしは、照れながら、微笑んだ。
「かがりさん、そろそろ…。」
池田に言われ、あたしは、二人に、一礼し、神社に向かった。
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