桜の色は、藍色の花…
 桜も散り、爽やかな風が吹く、日々。
 おみつが、女の子を五人連れてきた。
 「おせんさん、何人か、買っておくれよ。
かつらに、禿がいるだろ?
それに、みつばと、ゆいなにも、禿がいるだろ?」
「仕方ないねぇ…。
じゃあ、二人買うよ。」
「毎度。
どの子にする?」
「六歳の子を二人もらおうか。」
「六歳なら、この二人だよ。」
「じゃあ、その子達をもらうよ。」
「二人で十四両だよ。」
「あいよ。」
 おせんは、十四両をおみつに渡した。
 「かがりは?」
「かがりなら、ゆきのの部屋で遊んでるさ。
もう、日課になってるのさ。」
「そうかい…。
じゃあ、あたいはこれで。」
 おみつは、後ろ髪を引っ張られる、ような思いで、見世を後にした。
 おせんは、買った女の子達を、自分の部屋に連れて行った。
 「じゃあ、まず、名前を聞こうか。
お前から、言いな。」
 おせんは、自分から見て、左側の子指差した。
 女の子は、恐る恐る、答えた。
 「おゆきです。」
「お前は?」
「おらん…、です…。」
 おせんは、名前のことを話した。
 そして、おせんは、名前を考え始めた。
 「おゆきは、かえで。
おらんは、ゆず。
いいね?」
 二人は、返事した。
 その後、吉原のこと、見世のこと、全て、話して、あたしが呼ばれ、あたしは、すぐに、おせんのところに行った。
 「おはようございます。
かがりです。
何かご用でしょうか?」
「かがり。
入ってきな。」
「はい。
失礼します。」
 あたしは、障子戸を開け、一礼し、部屋に入り、障子戸を閉め、また、一礼した。
 おせんは、かえでとゆずに「この子が、さっき、話した、引っ込み禿だよ。」と言った。
 あたしは、女の子二人の方を向いて、頭を下げた。
 「お初にお目にかかります。
近江屋で、引っ込み禿を務めさせていただいております。
以後お見知り置きをお願い致します。」
 かえでとゆずは、驚いて、口が開いたまま。
 「これが、引っ込み禿だよ。」
 おせんは、自慢げに言った。
 「かがり、もう行っていいよ。」
「はい。
失礼致します。」
「かがり、ゆきののところに行くのかい?」
「はい。」
「分かった。
後で、ゆきののところにも行くからね?」
「はい。
姉さんに、伝えておきます。」
「頼んだよ。」
「はい。
失礼致します。」
 あたしは、ゆきののところに帰った。
 そして、「新しい子が、入った。」と伝えた。
 それから、いつものように、紙風船で遊んだ。
 そこに、おせんが、新しい子を連れて来た。
 あたしは、ゆきのに言われた通り、ゆきのの膝に座った。
 おせんは、ゆきのの正面に座り、二人を紹介した。
 二人は、挨拶をし終わると、次の姉さんのところに連れて行かれた。
 「残った、格子太夫は、一人だ。
お前達の面倒を見てくれる人だよ。」
 おせんが、連れてったのは、かつらのとこだった。
 「かつら、新しい子を連れてきたよ。
入っていいかい?」
「いいよ。」
 部屋に入ると、かつらは、煙管の煙を吐いていた。
 「かつら、この子達、今日から、お前の下につけるよ?
いいね?」
「構やしないよ。」
「かえで、ゆず。
かつら姉さんに挨拶しな。」
 二人は、挨拶した。
 それから、二人は、新造に挨拶し、禿に挨拶した。
 朝ご飯の時間になり、あたしが、席につくと、かえでが、もみじに聞いた。
 「何で、かがりちゃんは、別の献立で、準備もしないの?」
「かがりちゃんは、引っ込み禿だからいいの。
引っ込み禿は、特別なの。」
「へぇ…。
そうなんだ。」
 羨ましい顔で見る、かえで。
 「うらやましがっちゃ、だめよ。
引っ込み禿って、大変なんだよ?
稽古厳しいし、妬まれるし…。」
「そうなんだ。」
「うん。」
 朝ご飯のあと、みんなで、掃除をして、禿は、稽古に行き、あたしは、楼主の部屋に行った。
 かえでは、また、もみじに聞いた。
 「かがりちゃんは、行かないの?」
「かがりちゃんは、楼主に教えてもらうの。
あたし達とは、違うの。」
「そうなんだ…。」
「かがりちゃんは、お風呂と、ご飯と、掃除の時だけだよ。」
「そうなんだ。
部屋ももらえるの?」
「あぁ、あれは、かがりちゃんだけの特別。
ちょっと、事件があってね…。」
「そうなんだ。
かがりちゃん、かなり、特別なんだね。」
「仕方ないよ。
でも、私達は、姉さんが買ってくれるけど、かがりちゃんは、借金なんだよ。
だから、かがりちゃんは、太夫になるのが決まってるの。
じゃないと、借金返せれないから。」
「そうなんだ。」
「うん。」
 あたしは、禿達と一緒に、晩ご飯を食べ、自分の部屋に戻った。
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