桜の色は、藍色の花…
 ゆきのが、身請けされて、数日経った、ある日、あたしと、もみじと、ふじと、いぶきと、かすみと、いずみと、ぼたんが、おせんに呼ばれた。
 「いいかい?
今日、ここに、お前達を呼んだのは、お前達の新しい姉女郎が決まったからだよ。
一度しか言わないから、よーくお聞き。
まず、市川の下につく子達から言うからね?
ちゃんとお聞き。
もみじ、ふじ、いぶき、かすみ、以上。
いずみと、ぼたんは、かつらの下についてもらうよ。
みんな、しっかり、姉さんの言うことを聞くこと!!」
 みんな返事をした。
 「(あたし、呼ばれてない…。)
(そもそも、姉さんの下につかないんじゃなかったっけ?)」
 なんて、考えてたら、おせんに名前を呼ばれた。
 「かがり!」
「はいっ!」
「お前は、今まで通り、楼主に教えてもらうが、遊びに行くのは、市川のとこだよ。
いいね?」
「はい。
(今までと一緒か。)
(これだけで、呼ばれたのかな…?)」
「じゃあ、お前達、新しい姉さんに、挨拶してきな。」
 全員返事をした。
 「かがり!」
「はい。」
「お前は、少し残りな。」
「はい。」
 あたしは、おせんの正面に座った。
 「かがり。
お前には、もう一つあってね。
十四になった時、楼主と、市川から教えをもらうことになった。
十四になる時、もう一度言うが、覚えておくんだよ?」
「はい。」
「じゃあ、お前も、挨拶しに行きな。」
「はい。」
 あたしは、おせんに、一礼し、市川のところへ行った。
 他の禿達は、もう、挨拶を済ませて、食堂に向かっていた。
 あたしは、市川のとこに行き、障子戸の前で、声をかけた。
 「市川姉さん、かがりです。
失礼して、よろしいでしょうか?」
「かがり。
入っておいで。」
「はい。
失礼します。」
 あたしは、市川の部屋に入った。
 その部屋は、ゆきのが使っていた部屋で、ゆきのとの思い出が、押し寄せてきて、涙した。
 市川は、慌てた。
 「かがり、どうしたんだい?!」
「も…申し訳ございません…。
ゆきの姉さんを、思い出してしまって…。」
「そうか…。
毎日のように、遊んでいたんだもんね…。」
 市川は、あたしを抱きしめ、あたしは、声をあげて泣いた。
 「かがり…。
私も寂しいよ…。
ゆきの姉さんのようには、いかないかもしれないけど、頑張るから、見てて?」
「はい。」
 あたしは、涙を拭いた。
 そして、震える声で、市川に挨拶した。
 「市川姉さん。
これから、よろしくお願いします。」
「かがり…。
私こそ、お願いね?」
「はいっ!」
 そこに、もみじが来たので、あたしは、市川に一礼して、食堂に行った。
< 35 / 42 >

この作品をシェア

pagetop