桜の色は、藍色の花…
 寒い冬がきたー。
 寒い冬でも、あたし達、女郎には、足袋を履かせてくれなかった。
 あたしは、市川の部屋で遊ぶことが多くなった。
 「かがり…。」
「はい。
太夫。
何でしょう?」
「かがりは、好きな人、いるかい?」
 あたしは、ふっと、あの男の子が浮かんだが、それが恋とは、知らなかった。
 だから、「いない。」と答えた。
 「恋はいいよ。
女を、もっと、女にし、美しくする。
かがりも、ちゃんと、恋するんだよ?」
「はい。
でも、太夫。
恋って、どんな感じなんですか?」
「その人のことを、考えると、胸がね、熱くなったり、苦しくなったりするんだよ。
会えたら、熱くなり、会えなかったら、苦しくなるんだ。」
「そうなんですか…。
(あたし…、あの男の子に、恋してるんだ…。)」
 この時、初めて知った。
 あたしは、「(あの男の子が好きで、それは、恋なんだ。)」と…。
 でも、市川には、言えなかった…。
 何故か、秘密にしておかないといけない気がした。
 「今日も冷えるねぇ…。」
「火番に、もっと、炭を焼いてもらいますか?」
「そうだね。
客も、寒かったら、嫌だろうし。」
「分かりました。
言ってきます。」
 あたしは、火番に、「太夫の部屋を暖かくするよう。」言った。
 火番は、すぐに、市川のとこに行き、暖かくした。
 「太夫、これでいいですか?」
「ええ。
ありがとう。」
 あたしと市川は、微笑んだ。
 火番が、下に降り、あたしも、朝ご飯の為、下に降りた。
 「かがりちゃん、また、太夫のとこにいたの?」
「うん。」
 そこに、あおはが、割って入ってきた。
 「太夫に、おべっかして、本当、嫌な子だね。
そんなに、自分を売り込みたいのかい?
まだ、客もとれないくせに!」
「あおは姉さんこそ、引っ込み禿のあたしに、嫉妬ですか?
大人気ないですよ?」
「何よっ!!」
 あたしに殴りかかった時、楼主が止めた。
 「あおは!!
おめえさんは、また、折檻部屋に入れられたいか?!
嫌なら、かがりに、手を出すな!!」
「くっ…!!」
 あおはは、大人しくなり、ご飯を食べた。
 禿の中でも、歳の小さい子は、あたしとあおはのことを知らなかったから、驚いていた。
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