桜の色は、藍色の花…
十二月二十八日ー。
今日は、遊女の誰もが、客を呼ばなくてはならない、紋日(もんぴ)。
遊女は、この日を、何よりも恐れていた。
紋日は、毎月、何回かある。
この日、休みを取る遊女は、自分の揚代(あげだい)を払わなければ、ならなかった。
揚代と言うのは、遊女や芸者を茶屋に呼んで、遊ぶ時の代金のこと。
だから、みんなは、必死に客を呼んだ。
客の呼び方は、手紙。
客の方も、この紋を嫌っていた。
遊女達が、しつこく営業してくるからだ。
この日は、客と遊女が、一番、喧嘩する日でもあった。
「営業をしてくるってこたぁ、俺は、一客なんだろ?!
おめぇの気持ちは、よぉく分かった!!
俺の事、「好き。」って言ったのも、嘘だろ?!」
どの客も、こう言って、怒るから。
客の怒(いか)りをどう鎮(しず)めるかは、遊女のでの見せ所。
大抵の遊女は、泣いて見せ、客の心を掴む。
「どうして、そんな事、言うんでありんす?
わっちは、こんなにも、あなた様の事を
思ってるのに…。
わっちの心は、あなた様には、届かないんでありんすね…。」
「そんなこたぁねぇよ。
泣かないでくれよ…。」
「本当でありんすか?」
「ああ!
本当だとも!!」
こんなやり取りが、そこら中で起きていた。
このやり取りをしないのが、格子太夫と太夫。
流石と言うべきだろう。
あたしと禿は、そんな苦労を知らず、ぐっすり眠っていた。
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