砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
お茶のカップを手にして窓の外を眺めるカイン。モレーが特別にあつらえたゆったりとした服を着ている。
いつものキリッとした男装とは違い、優しげな雰囲気だ。

城下にいる時は整った顔立ちを髪で隠していた。なるべく目立たないように。
いつも張り詰めた糸のような緊張感で、近寄る者を誰も立ち入らせないようにしていた。

だが、今、朝日に照らされたその横顔はひどく穏やかで、神々しいまでに美しい。

その穏やかな表情は、母性から生まれた優しさをまとっているようだ。
体だけでなく心も、母となる為に変化をしているのだろう。

ふとカインがせり出したお腹に手を当てた。

「どうなさいましたか?」
「少し、動きが鈍い気がする」
「だいぶ大きくなってまいりましたからね。自分の気に入った体勢を決められたのかもしれません」
「そんなものなのか?」
「はい。いつまでもグルグルと動いていたら、大きくなれませんでしょう?」

カインは手帳を取り出してメモをする。
何もかもが初めての経験であるカインにとって、経験豊富なモレーは本当に心強い。
カインは手帳を取り出してメモをする。

「あ、馬がまいりましたね。モリセットがまたお仕事を持ってきたのでしょう。
カルヴィン様、根を詰めすぎないでくださいましね」

窓から見える一本道に、かすかに馬に乗った人の姿が確認できた。

「あら、モリセットじゃないわ。あの立派な馬は…」

モリセットがいつも使う栗毛の馬ではない。
それより一回り大きくて黒毛の馬にのり、颯爽と現れたのはアベルだった。
出迎える為にモレーが大慌てで部屋を飛び出していった。

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