砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命


「アルセウス様、そろそろお休みの時間でございますよ」

モレーが声をかけるが返事はない。アルスは真剣に木片を積み続けている。

「アルセウス様、カルヴィン様に叱られますよ」

まだ五歳だというのに周囲が見えなくなるほどの集中力。そんなところがカインによく似ている。
この状態になってしまうととことんやらせておくしかない。そのうち力尽きてコテンと寝てしまうと、モレーは経験から知っていた。


「立派な城だな、アルス。でも、子供がこんな時間まで起きていていいのか?」

突然、声をかけられた。するとそれまでの集中が嘘のようにアルスは即座に反応する。

「アベル!!きてくれたの!?こんばんは!」

満面の笑みで手にしていた積み木を放り、アルスはアベルに飛びついた。アベルはそんなアルスを軽々と抱き上げる。


アルスの温もり、重さ、そして何より屈託のない笑顔はいつでもアベルに幸福感を与えてくれる。
しかも愛しい我が子は、アベルをとても慕ってくれる。
命をすり減らすようにして仕事をこなす毎日も、こんな一瞬があるから頑張れた。

そんな満ち足りた逢瀬を喜んでいると。


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