砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
自由。
アベルの望みは決して叶わないと、カインは知っている。

「残念ですが、アベルは政略結婚のコマにされると思いますが」
「フラフラと遊んでばかりで、オルディン公爵か師レオポルトがそばにいなければ何にも出来ない愚王子だ。
政略結婚させたところで、誰の利益になどなるものか。
結婚話が出たら阻止する方法を考える。お前も考えろ」

そうは言ってもアベルのことだ。結婚すれば相手の女性に情が湧いて大切にするだろう。
アベルの妻となる女性。
ーーそんな女性が現れたら、自分は用なしだ。

「受け入れてしまえばいい。
もっと楽に生きていいんじゃないですか?」

可愛げのないことを言っていると、自分でもわかっている。
ーーもし、アベルが結婚して私の前からいなくなったら。
アルスの成長を待って、私は……。

カインは、手にした書物のページをめくる。

カインが読んでいたのは薬草に関するものだった。
体に良い薬草はもちろんだが、苦しまずに死ねる毒や体中が腫れ上がって見るも無惨な死に方をする毒等々、色々な薬草のことが書かれている。

アベルは自由になれる日を楽しみに毎日を過ごしているが、カインはアベルという絶対的な守護を失った時、いかに秘密を守ったまま死ねるかを考えてばかりいた。

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