砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「国内の有力な貴族のご令嬢の名前がいくつか候補に上がっています。若くて美しく、アベルの立場を理解してくれるような聡明な女性を探してください」

「じゃあ、お前がなれ」
「え?」

あまりに唐突な発言に、カインは本から顔をあげて眉間に皺を寄せた。

「家柄は国内の貴族の頂点。若くて美しくて、俺の立場を理解してくれる聡明な女性。カイン、お前が俺の妻になれ」

思いもかけない求婚の言葉。
アベルの目は真っ直ぐにカインを捉え、表情は硬い。
間違いない。これは冗談のたぐいではない。本気で女性としてのカインを求めてくれている。

カインにとっては恐ろしいことだった。
神に背いて男のフリをしている己の罪を暴かれれば、その先にあるのは家の断絶と処刑だ。
死は怖くはない。だが、カインが断罪されればアルスの立場は罪人の子。そしてアベルも罪を隠蔽していたとしてただではすまないだろう。

それが現実だ。

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