砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「愛してると言ってくれ。俺を愛していると。
そうすれば、俺はカインの為に誰より強く居られる。どんな状況に置かれても、カイン、お前が俺を愛してくれるなら、それだけでいい」

今にも泣きそうなほど、追い詰められたようなアベル。血を吐くような苦しみに満ちた願いは、カインの心を揺り動かす。

自分の立場の危うさにアベル自身が一番不安なのだとわかっている。


だが、それほどまでに請われても、カインは静かに首を横に振った。


「言えません。
それを言ったら私はもう、オルディン公爵で居られない。
許してください、アベル」

そう。一度でも、この思いを言葉にしたら。
今までの命がけで築き上げてきたオルディン公爵としての全てが壊れてしまう。

「……そうだな。
追い詰めて悪かった。今夜はどうかしてるな。バカなことを口走った。忘れてくれ」

アベルは、そっとカインの体を離すと優しく微笑んだ。
その微笑みがなんだか弱々しい。不安と諦めが入り混じったなんとも寂しい笑顔はアベルに似合わない。

こんな時、どうしたらアベルが元気になるか。
カインにしかできないことがある。

「アベル。言葉より、あなたにしか出来ない確認方法があります。
来てください。私自身も知らない、アベルしか知らない私の一番奥に」

アベルの首筋に唇を寄せながらそっとアベルに体を預け、アベルの指に自分の指を絡めた。離れないようにぎゅっと力を籠める。

「…その誘い、乗ってやろう。今夜のお前は俺だけのものだ。すべてをさらけ出してもらおう」

カインはこくん、と頷いた。言葉に出来ない思いを知ってほしくて、アベルの望むままに、体を預けた。
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