砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
朝の日差しが強くなってくる。
いつまでもこのままではいられない。カインも一度屋敷に戻ってオルディン公爵として支度をしなければならない。

「行くな」
「…」

起き上がろうとしたカインをアベルは自分の胸の中に引き戻した。
カインは小さく微笑みを浮かべてアベルの背に手をまわし、抱きついた。

「この温もりを忘れない。辛いときにはこの幸せだった時間を思い出す。きっと乗り切れるから。
ずっと好きでした。きっとこれからも好きです。私にはあなただけです、アベル」

「あぁ。俺もだ。忘れない。こんなに愛したのはお前だけだ。
これからも、お前と過ごした幸せな時間を支えに生きていく」



そして二人は、ゆっくりと離れた。最後まで絡めた指を名残惜しくそっとほどいて。

フォトキナ王国王弟、そしてオルディン公爵と別々の道を歩き出す。
もう二度と重なることはないであろう、二つの道へ……




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