砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
ラインハルトは挑戦的に笑うと突然ブリュオー語でまくしたてた。

「貴殿は我が国の言語を確実に理解している。会話が理解できないふりをしても私はだしぬけはしないよ。皆の会話をしっかりと聞き取って、貴殿にいたずらをした側近をしっかりとマークしていた。だからこその、あの動きだろう。
それにさっき私がオルディン公爵の名前を出した時に動揺してしまったね」

悔しいほどに相手のほうがうわてだった。

ここは、味方が一人もいない敵陣。最上位にいる国王に悪い印象を持たれてはこれから先やってはいけない。
それに。
彼に気に入られるのは悪くない。自分の後ろ盾になってくれるなら最高だ。何かがあった時にブリュオー国内だけでなく、フォトキナの兄王相手でも優位に立てるかもしれない。

アベルは肩をすくめ、ラインハルトをまっすぐに見据えた。

ーー彼を相手に目先のごまかしは効かない。
ならば、正々堂々正面から駆け引きをするまでだ。


「……協力の見返りは?」

アベルの唇からこぼれた言葉は、完璧なブリュオー語だった。

「貴殿の安全。この国での自由な行動を約束する。
私は諍いは好まない。どうせならフォトキナとは友好関係を続けていきたいんだ。
アルベルト王子、歓迎するよ」

差し出されたラインハルトの手を握り返す。

カインに再び会える日を希望に。その日まで生きるために。
新たなアベルの居場所が出来た瞬間だった。
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