砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命

フォトキナは豊かな土地に恵まれ国民は穏やかな性格だ。基本、争いは話し合いで解決するし、国王の統治も行き届いている…はずだ。

だが、アベルがこの国に来てから三年の年月が流れている。
その三年の間に、悠久と思われていた母国の平和が脅かされているらしい。母国で武力の強化が必要な事態が起こっていることに胸がざわつく。

ーー報告書が届くまでの一ヶ月という時間が、事態を悪化させていなければいいが。

兄に子供が生まれた吉事報告はいまだにない。
そしてカインからも何の知らせはない。せめて、元気だとの便りくらい欲しいものだが、なしのつぶてだ。

かろうじて、定例報告書内に時折カインの字を見つけることがある。今回も書類の二枚目、隣国との小競り合いで農地が荒れて作物が不作になりそうだ、という報告は下部にオルディン公爵のサインがある。

見慣れたサインを指でなぞれば、押し殺していたはずの慕情で胸が張り裂けそうになる。

ーーカイン。どうしている?元気なのか?
会いたい。
会いたい。
一目でもいい、お前に会いたい。

それだけがただ一つの願い。

君がいない世界は、ただ空しく時間が流れていくだけ。

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