砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
ーーよかった。もう、安心だ。

アベルがアルスを抱きかかえてくれたのを見て、カインの中に安堵が広がった。

途端に全身に激痛が走る。意識を保つことができないほどだ。

床に倒れこんだカインの体にアベルが駆け寄った。

「おい、しっかりしろ、カイ……」
「殿下、私に、名前は、ありません。
アルスを、おねがいし……ます」

カインはとっさにアベルの唇に指を当てて声を封じた。動いただけで激痛が走り、痛みで声を出すのも息をすることさえ苦しい。

ーーこのまま、死ぬのかもしれない。
それでもいい。
きっとアベルなら私に代わってアルスを守ってくれる。

最後にアベルに会えた。それだけで幸せだから。



小さく笑みを浮かべ、カインは意識を手放した。

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