砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「このまま目覚めなかったらどうしようかと思った。
俺をこの世界に一人置いていかないでくれよ」
「馬鹿なことを。殿下には婚約者がいらっしゃるのに」

多く言葉を発し過ぎたのか、不意に身体中に耐えがたいほどの痛みが走った。ぼんやりしていた頭は痛みで一気に覚醒する。

ーー夢じゃない。この痛みは現実だ。

痛みに顔をしかめたカインの頬をアベルが優しく撫でた。

「無理するな。とっさに受け身をとっていたから無事だったものの、命を落としてもおかしくないくらいの怪我だ」

アベルの姿の向こう、窓の外に月が見えた。
あの欠け具合をみるに、少なくとも5日は経っている。

< 220 / 246 >

この作品をシェア

pagetop