砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
アベルはカインの指に唇を落とし、もう片方の手でカインの手を包んだ。
その力強さと温もりがずっと抱いていたアベルへの慕情をも包んでいく。

「私も、もう離れたくない」

それがカインの答えだった。

「でもアイリーン王女と婚約破棄となればブリュオーだって黙っていないですよね?両国の友好にひびが入りかねません」

「この三年のあいだに、ラインハルト陛下から絶対の信頼を得ている。
それに俺、王女にはおじさんって言われて嫌われてるんだ。
ラインハルト陛下だって、可愛い愛娘を本気で俺にくれるつもりじゃないし、あのじゃじゃ馬娘がフォトキナの王妃になれる器じゃないこともわかっている。
あの人は最初から俺がフォトキナに戻って王位に就くと読んでいた。その日までブリュオーで俺に娘の婚約者という立場を用意してくれていただけだ」

「……アベルが、おじさん……」

息子と同じ歳の王女から見れば、そうなのかもしれない。それにしても、この国の太陽のようなアベルにおじさんという言葉が何とも似合わない。

「お、笑ったな。お前の笑顔は俺に力をくれる。
さぁ、王位奪還に、結婚に、大忙しだぞ」

「大丈夫。もう迷いません。私は自分の生きる意味を見つけたから。
私は亡きカルヴィン・オルディンの妻で、アルセウス・オルディンの母。どんなことがあっても、私が亡き夫の分もあなたを支えます。
私はカレン。アルベルト殿下の妻になる女です。
あなたを……愛してる」

涙でお互いの顔がにじむ。重なった唇は喜びのあまり震えていた。

「早く良くなれ。お前を思いっきり抱きしめたい」



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