砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「望んでも叶わないなら、何も望まずに生きていくと思っていたのに。
自由を手に入れた私が女性として生きているのは、あなたにもう一度会えたら女性として会いたかったから。
女性として会えたら、ひょっとしたら普通の男女のように愛を交わせるかもなんて不相応にも願ってしまったから。
色々理由をつけたけど、私の一番の望みは昔も今もあなたのそばで生きていきたいことなのです」

カインはそっと自分の指に力を込めてそっとアベルの指に絡める。薬草で紫色に染まったカインの指先と剣の稽古で硬くなったアベルの指先を見てカインは小さく笑った。

「懐かしい。
愛していると言葉にすれば、カルヴィン・オルディンとしての人生が終わる。それでもあなたへの気持ちが抑えられなかった。こうやって指を絡めて手を重ねると指や手のひらがより密着して、あなたの特別になれた気がしたものです。
初めてお会いした時は手の中にドレイ虫の死骸を入れられましたけど」

「はは、イタズラとはいえ、お前とは最初から指を絡めて握手したな。
もう愛を知らなかった時には戻れないし、お前と離れていたくない。
国王となってどんなに辛いことが待っていてもお前がそばにいてくれるなら、それでいいんだ」
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