砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
ラインハルトが視線をカレンに移す。
だがカレンは深々と頭を垂れたまま、微動だにしない。
古来よりブリュオーでは女性が国王の前で自由に発言することは許されていない。国王自らが許可をするまでは顔をあげることさえできない。
最近ではなおざりになっている慣行を完璧にこなせることに好感を抱いた。
「カレン・オルディン夫人の発言を認める。あなたの亡き夫について聞かせてください」
「ありがとうございます」
カレンが顔をあげると、ラインハルトがほぅと声を上げた。
光沢のある白地に金糸の刺繍が豪奢なドレスに、同じく白地の手袋という礼装。それを完璧に着こなしつつ気品ある立ち姿に惹きつけられた。田舎貴族の娘だとは到底思えない。それどころか、相当高位の貴族の娘でもこれほどの存在感は出せないだろう。
「あなたもきれいなブリュオー語ですね。どこかで習ったのですか?」
「本で学びました。独学ですのでお聞きぐるしいところはご容赦ください」
「いや、聞き苦しいどころか、完璧な発音だ。驚いたな。田舎出身と聞いていたが、これもカルヴィン・オルディン氏の教育のたまもの、ですか。
ますます、会ってみたかったなぁ、カルヴィン・オルディン氏に」
ーー探っている。
カレンはラインハルトの黄金の瞳が真実を見透かすようにこちらをじっと見ていることに畏れを感じていた。
このほんの数分の邂逅だけで、自分が生まれてからずっと隠していた真実を、あの瞳があっさりと暴いてしまいそうで怖かった。
だがカレンは深々と頭を垂れたまま、微動だにしない。
古来よりブリュオーでは女性が国王の前で自由に発言することは許されていない。国王自らが許可をするまでは顔をあげることさえできない。
最近ではなおざりになっている慣行を完璧にこなせることに好感を抱いた。
「カレン・オルディン夫人の発言を認める。あなたの亡き夫について聞かせてください」
「ありがとうございます」
カレンが顔をあげると、ラインハルトがほぅと声を上げた。
光沢のある白地に金糸の刺繍が豪奢なドレスに、同じく白地の手袋という礼装。それを完璧に着こなしつつ気品ある立ち姿に惹きつけられた。田舎貴族の娘だとは到底思えない。それどころか、相当高位の貴族の娘でもこれほどの存在感は出せないだろう。
「あなたもきれいなブリュオー語ですね。どこかで習ったのですか?」
「本で学びました。独学ですのでお聞きぐるしいところはご容赦ください」
「いや、聞き苦しいどころか、完璧な発音だ。驚いたな。田舎出身と聞いていたが、これもカルヴィン・オルディン氏の教育のたまもの、ですか。
ますます、会ってみたかったなぁ、カルヴィン・オルディン氏に」
ーー探っている。
カレンはラインハルトの黄金の瞳が真実を見透かすようにこちらをじっと見ていることに畏れを感じていた。
このほんの数分の邂逅だけで、自分が生まれてからずっと隠していた真実を、あの瞳があっさりと暴いてしまいそうで怖かった。