砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
そんなカレンの肩をアベルがポンと叩く。大丈夫だと頷くその姿は、ラインハルトに匹敵しそうなほどの自信と威厳が見えた。

「俺はアイリーンとの婚約を破棄し、カレンと結婚してフォトキナ国王になる。
俺がフォトキナ国王に就いたあかつきには、ブリュオーとの恒久的な友好と協力体制の強化を約束する」

「やっと決心したのか。ずいぶん待たされたものだ」

アベルの決意に満ちた瞳の輝きに、その時が来たのだとラインハルトは感じていた。
ただ、カレンについての疑いが諸手を上げて賛成するための妨げになっている。

「だが、カルヴィン・オルディン氏はどう思うだろう。さすがに祝福はしないだろうね。カルヴィン氏ほどの才があるならまだしも、田舎出身で自分の妻だった女性が王妃に、などと」

そう言ってラインハルトがカレンを見た。その目は真実を射抜くような鋭さだ。

その瞬間にカレンは察した。ラインハルトはカレンがカルヴィンだと疑っている、と。
何をもって疑いを持たれたのだろう。
ずっとそばにいた師レオポルトさえ騙せていたというのに、こんな一瞬で見破られたとは。

ーーこれ以上隠しているのは得策ではない。
見抜かれる嘘をつき続けるよりは、真実を明かし、彼の判断に託そう。

カレンは隣のアベルとアルスに視線を移す。
二人はカレンの決心に気づいて、小さくうなづいてくれた。
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