砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「正直に言ってください。
あなたはかつて、カルヴィン・オルディンと名乗っていましたか?」
「……はい、と答えたら師レオポルトは私を断罪し、アルスの公爵位をはく奪し、アベルも共犯者としますか?」

カレンは静かにレオポルトに問うた。レオポルトはひゅっと息を飲む。これは国家を揺るがすほどの重罪だと改めて認識する。
だがその罪を背負うべきはニックス・オルディンであり、本来であれば家族になれたはずのこの三人は被害者なのだ。

「女性の格好をしていても、強い意志を秘めたその姿はかつてのカルヴィンそのものだ。
男と偽って生きる人生は辛かったであろう、カルヴィン。そして、愛を殺してブリュオーに渡ったアベルも苦しかったであろう。二人を親と呼ぶこともできず、この幼さで公爵を継いだアルスも頑張った。
三人ともよくぞ、今日まで耐えてくれた。ありがとう。
私は今、神に感謝している。この国に、アベルに最高のお妃を授けて下さったことに。
貴女を歓迎します、カレン」

狂喜乱舞といわんばかりにアベルとアルスがカレンに抱きつく。カレンも頬をほころばせて二人を抱きとめた。

「やった!師レオポルトなら絶対そう言ってくれるって思ってました!ありがとう!
母上、父上、良かった」
「アルス、殿下は国王になられるお方です。父上などと気安く呼んでは」
「アルスに父と呼ばれることは俺の悲願だ。三人でいる時だけでも父と呼んでほしいと。やっとこの時が来たんだ。諦めなくてよかった。
それにしても、現実主義の師レオポルトがカルヴィンが女性だったらなんて想像してくれるわけがないと思っていたのだが。
なぜだ?」

レオポルトは笑ってしゃがみこむとアルスの頬に手を添えた。

「私は、アベルとカルヴィンを幼少期からよく知っている。アルスの容姿は確かにカルヴィンそっくりだが、その表情や仕草は幼いころのアベルにそっくりだ。これまでの気づかぬふりをしていた違和感も真実を知れば納得がいく。
だいぶ遠回りしましたが、アベル、カレン、アルス、この国をフォトキナをよろしくお願いします」


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