砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命


「カルヴィン様、お帰りなさいませ」
執事のモリセットは、カインがどんなに遅くなっても必ず出迎えてくれる。

「お顔の色が優れませんね?」

そしてモリセットは、カインのわずかな異常も見逃さない。

「あぁ。モレーを頼めるか?」

カインはそう告げると、自室に引き上げる。
自室に着くとベッドに倒れ込み、海老のように身体を丸めながら腹部を押さえた。自室にいるという安心感からか、腹痛が一気に押し寄せる。


「カルヴィン様。モレーでございますよ。
お薬をお持ちしました」

しばらくすると、乳母のモレーがそっとやってきた。

「悪いね、モレー」

カインは、モレーが差し出した薬を飲んで、再び横になる。

「腰をさすりましょうね。無理なさらないで今日もお休みされればよろしかったのに」

腹部の鈍痛に顔をしかめながら、カインは目を閉じる。
月に一度とはいえ、己の身体が恨めしい。

「昨日、休んだからな。
あぁ、ありがとうモレー、少し楽になってきた」

「それはよろしゅうございました。明日もお仕事でございますか?」
「あぁ」
「では、こちらも、もう少しご用意しておきますね」

モレーは、ベッドの脇のテーブルの引き出しをあける。
ぼろ布に古紙や綿をくるんだ長方形の小さなクッションのような物がいくつも仕舞われていた。

「いつもすまない」

カインは、腰をさする温かいモレーの手に救われた気分になる。
忌まわしい身体の不調も、モレーがいてくれるからなんとかなっている。



だが、いつまでもこのままではいられない。
カインにとって決断の時は、近づきつつある。


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