砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「お見事」

アベルに褒められ、うやうやしくカインは頭を下げる。

「お褒めにあずかり、光栄です。
ですが王子、私には、やはりまだ早い。
もう少し背が伸びなければ、お美しいご令嬢とは不釣合い。今しばらくは傍観者でいさせて下さい」

「背など気にならないほど、立派だったがな。
まぁ、いい。その時が来たら二人で舞踏会の主役になろう。女もよりどりみどりだぞ」

アベルはそう言って、再びフロアへ戻っていった。女たちは、アベルに少しでも近づこうと目の色を変えている。
あわよくば、今宵の夜伽に選ばれたい…などと考えているのは、誰の目にも明らかだ。

ーーアベルが本気で相手をするとでも思っているのか?

カインは、そんな彼女たちを冷ややかな目で見ていた。

世継ぎは兄ディアルド王子がいる。堅物で聡明で努力家で近寄りがたい存在。彼ならば時期国王として相応しい、と誰もが思っているだろう。

一方のアベルは社交的で近寄りやすい存在。遊んでばかりの気楽な愚王子だと周囲には見えている。

だがそれは愚王子を演じて人々の目をくらませ、権力争いを避け兄を引きたてるというアベルの思い通りの筋書きだ。

そのことに気づいているのは師レオポルトとカインだけ。
その優越感を胸に、カインは女性に囲まれたアベルを見守った。
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