砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命


「カイン、見ろよ。綺麗な夕陽だな」
「えぇ。これは明日も晴れますね」

日課となっている乗馬の途中。アベルは小高い丘の上で、木々の間から見える景色を指差した。
沈む夕陽を見つめるカインの顔は穏やかだ。

「そろそろ戻るか。マリー嬢も待っているだろうからな」
「マリー嬢…今度はミヤニング家ですか?アニー嬢とは?」

カインは馬の手綱を取りながらやや呆れ気味に言った。アベルが口にする女性の名前がまた変わったからだ。

「過ぎたことさ」
「まったく…さっさと決まったお相手を見つけて下さい」
「カインが女だったら、迷わず選ぶぞ」

カインが苦言するたび、アベルの返答は同じ。もう幾度も繰り返した不毛な会話。

カインはアベルのこの返答を聞くたびに、ひどく心が乱される。

ーー女だったらなんて、ありえないと思っているからこそ言っているわけで。アベルが本気でカインが女であってほしいと望んでいるわけじゃないから。
だから、動揺するな。落ち着け。

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