砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命

「私は、男…です」

カインは、かすれた声で否定するとギュッと唇を噛み締めた。

ずっと秘めてきた真実。一生、突き通すはずだった嘘。墓場まで背負うはずだった罪。

父ニックスは、実子の男子に家を継がせることに固執していた。上の三人女子が続き、年齢的にも最後と思っていた四番目に望みをかけたが、産声を上げたのはまたも女の子だった。
その時、ニックスは考えた。四女を長男、男として育てていこうと。上の三人の女子が男子を産み、その子が後継者となるまでの“つなぎ”として。

ほんのわずかな間でも、娘婿という名の他人や遠縁という会ったこともないような人物にオルディン家を継がせるわけにはいかない。

ニックスは四女に『カルヴィン』と名付け、男として育てた。生母は産後の肥立ちが悪く早くに亡くなったため、カインを取り上げた乳母モレー、立ち会った執事モリセットだけが知る真実。実の姉たちさえも、カインを男と信じていた。

ニックスには、上の娘三人の誰かがすぐに男子を産むとの算段があったのだろう。特に長女と次女はカインが生まれた時にはすでに嫁いでいた。だから、カインが実際に家を継ぐことはない可能性は高かった。生まれた孫を後継者に据えて、カインは病弱を理由に屋敷に閉じ込めておくつもりだったのだ。

だが、ニックスの思惑は外れ、男子が授からないまま、カインが家督を相続することになってしまった。
真実が露見すれば全てが崩れ去る。カインはそんな砂上の城に仕立て上げられたのだ。



そして、今。
ついにカインの足元は砂のように脆く崩れた。


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