砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
カインの全てを知り尽くして、アベルはそっと体を離した。
優しく包み込むように抱きしめれば、カインは行為が終わったことにホッとしたのか、小さく息を吐いた。
「痛かったな。すまない」
カインは、何も答えずゆっくりと体を起こすと服を着る。破けた服を寄せ集めたが格好がつかない。だが、男物の外套をいつものように羽織れば、何ごともなかったようだ。
アベルは最初こそ怒りに任せて乱暴だったが、次第に優しくなった。
ーー優しくしないでほしかった。アベルが許してくれて、今まで通りの友情を続けてくれるなんて期待してしまうから。
だけど、私の生きる世界はそんなに甘くはない。
「…じき、雨も止みそうです」
窓を打つ雨音は、だいぶ小さくなっていた。
カインは部屋を見渡してランプ用の油の缶を見つけると、それを手に取った。
「私はいきますね。
アベルなら、大丈夫です。きっと王太子としてうまくやっていけます。自分の才能を信じてください」
「…カイン?」
アベルは、カインの様子がおかしいことに気づく。青ざめた顔に、笑みさえたたえている。
「何をするつもりだ、カイン」
「何って、私のすべきことはただ一つしか残っていません。
アベル、一日だけ時間を下さい」
「だから、何を言っているんだ」
アベルも起き上がり、近くにあったタオルを腰に巻いた。そのわずかな間にカインは迷いなくスタスタと扉へと歩いていく。